虹色アゲハ
そう、きっとそんな日が来ると…

望は今日も、生きる希望で心を飾る(・・・・・・・)


まるで、虹色のアゲハと(たわむ)れるように…



それは、倫太郎が生きてるからこそ持てる希望で。

ー「1人にしないで!」ー
意識を失う間際にかけた、その言葉は…
望の本音でもあったが、必死に繋ぎ止めようとした言葉であり。

ほっとけないと思ったかのように…
倫太郎はその命の限り、望の心を守っていたのだった。




「じゃあ倫太郎、また明日ね」

夕方になり、病院を出ると…

いつのまにか、雨は止んでいて。
空には大きな虹が架かっていた。


その時。

ふわりと光風に乗って、大好きな甘い匂いが望の鼻を掠めた。


すぐに辺りを見回すと。

湿った空気で、匂いがより強くなったのか…
病院の庭隅に、ブッドレアが繁っているのを見つける。


思わず引き寄せられた望は…
そこに張られた蜘蛛の巣に、アゲハ蝶が捕まっているのを目にして。

切ない思いで逃がしてあげると…
近くを迷走していたアゲハ蝶と、戯れ合うように飛んでいった。


想いを馳せて眺めていると、2匹はやがて見えなくなり…



あたかもそれは、虹の向こうに連れ立ったかのようだった。








ー「いつか俺が虹の向こうに連れてくよ」ー








結。
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