虹色アゲハ
「わかった。
じゃあビデオ通話に切り替えるから、顔色見せて」

『はあっ?
この大事な時に何言ってんだよっ。
いいから作戦に、』

「どっちが大事だと思ってんのよ!」
倫太郎の言葉を掻き消して、一喝する揚羽。

その瞬間、胸を思い切り掴まれて、何も言えなくなった倫太郎は…
思わず電話を切ってしまう。


「あっ…
何切ってんの、あいつ」
呆れながらも。

もうすぐ目的地に着いて、鷹巨と合流するため。
揚羽はふぅと一呼吸して、再び携帯を発信した。


「もしもし、鷹巨さん?
あの、大変申し訳ないんですが…
今日の約束、次の日曜に延期にしてもらってもいいですか?」

『えっ…
どうしたんですか?』

「実は、親の体調が悪くて…
側についててあげたいんです」

『…わかりました。
そういう事なら、全然来週で構いません』
鷹巨は、どこかほっとした声で答えた。

「ほんとにすみません…
もう、こっちに来てましたよね?」

『気にしないでください。
それに僕は…
聡子さんのそういう優しいところ、すごく素敵だと思います』

素敵、ね…
そこは結婚詐欺師らしく、好きっていうところじゃないの?
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