死にたいくんと生きたいちゃん
午前5時半過ぎ


締め切ったカーテン

肌にまとわり付く様な、じめつく空気

それを劈く朝の煌々とした光

その光と交わるスマホの画面


昼夜逆転して夜型人間になってしまった俺は、このくらいになると睡魔がゆっくりとやってくる。

そして目を閉じながら、こう想う。

《このまま、目が覚めなければどれほど良いか》

生きたいなんか思ったことが無い。死にたい。ただ、生きたくないんだ。

どうして俺は生きてるんだよ。

生きたいと懇願している何処かの知らない誰かに、俺の生命をあげられないものか。

だけども、自殺はしたくないんだ。

だって、親に迷惑かけるし、悲しませるのも癪だ。

それに、痛かったり苦しいのは嫌だからね。

そんな事をいつものように考えつつ、眠りにつこうとしていた。


すると、


俺しか居ないはずのこの部屋に啜り泣く女の子の声と、脳を突き抜ける様な耳鳴りがした。


なあ、おい嘘だろ?


平々凡々な人生18年を送ってきた俺は、ここで見事にひっくり返された。

幽霊は信じていたけれど、視たことも感じた事もなかった。

だからもちろんこの先も、そうだろうと思っていたんだ。

目をあけたら、目の前にいるよくあるやつなんじゃないの。コレ

余計に目開けられないよ、どうしたらいいんだよ。

体調が崩れそうになる冷たい脂汗をかいて、上手く働かない脳味噌を使って考えていると、

耳を傾けなければ聴こえないくらい、蚊の鳴く様な声で女の子が喋った。

『………そんな事を言わないで、そう考えてしまうのはとても哀しい。どうか、どうかお願いです』

まるで俺の頭の中の声が丸聞こえだったかのように、彼女は言った
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