策士な御曹司は真摯に愛を乞う
もう何度目かのリラックススタイルに、私の胸はほとんど条件反射で跳ね上がる。


「すみません。お仕事の邪魔なのはわかってますが……少し、お話したくて」


鼓動の反応を誤魔化すように、言葉を繋いだ。
頭上から、「え?」と困惑した声が降ってくる。


「邪魔ではないけど……今から?」


夏芽さんの反応も、もちろんよくわかる。
同居しているとは言っても、こんな時間に部屋を訪ねること自体、非常識で軽はずみだ。
でも、一晩置いてしまったら、きっとまたいろいろ考えて聞けなくなる。


「お願いします」


きっぱりと告げると、夏芽さんはわずかに目を泳がせた。
逡巡する様子を見せたけど、小さな溜め息をつく。


「どうぞ。入って」


大きくドアを開けて、私を室内に誘ってくれる。


「ありがとうございます」


緊張感を強めながら彼の前を通り過ぎ、書斎に足を踏み入れた。
わりと広いデスクと、壁一面の大きな書棚が目立つ。
『書斎』と呼ぶに相応しい、八畳ほどの部屋だ。


書棚には経済書に法律書、経営情報誌がぎっしりと並んでいる。
日本語だけじゃなく、英語、フランス語、ドイツ語……タイトルだけだと、私にはなんの言語かわからない本も揃っている。
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