契約結婚!一発逆転マニュアル♡
辰巳彩葉の件に関しては、依舞稀が解決したと言ってはいたが、このままで終わるかどうかは不安が残るところだった。

辰巳専務は本当に野心家で、地位と権力と金が大好きな男である。

自分の専務としてのポジションを守り確立するためには、娘さえも簡単に差し出せる。

そんな男の血を受け継いでいる女だ。

そのやり方を毛嫌いするか良しとするか、どっちかだろう。

前者を望んでいたけれど、依舞稀に対する攻撃的な態度を見るに、残念ながら彩葉は後者と言えるだろう。

そうであるならば、やはり依舞稀に言い負かされたくらいで引っ込むようなタマじゃない。

「先日小耳に挟んだのですが、休日に県外のとある市に行ったそうです。その場所というのがどうも、依舞稀さんの出身地だったそうで」

「なんだと?」

「偶然にしてはタイムリーすぎます」

「確かに偶然と楽観視するには気になるな」

開けた県であることに間違いはないが、あの派手好きな辰巳彩葉が、大した目的もなく好んで行くほどの場所だろうか?

そう考えるとやはり、依舞稀の身辺を探っているのではないだろうか。

今では興信所も金次第でどこまでも掘り下げて調べるところもあると聞いている。

依舞稀自身、自分の過去を隠して生きているわけではない。

辿っていけば簡単に見つけられるだろう。

一番厄介なのは、その類で調べられ、万が一にも副業をしていたことを突き止められてしまったら、依舞稀の職場での立場が危うくなるということだ。

依舞稀に店を辞めさせる際、オーナーに口外無用とそれなりのものを握らせた。

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