契約結婚!一発逆転マニュアル♡
しかし大きな負債を抱え、どれにも相談できずにダブルワークをこなし、精神と肉体の疲労でギリギリの生活を経験すれば、相手を傷付けないことだけが全てではないことを学ぶ事ができる。

人間の裏と表を目の当たりにしてきた依舞稀だからこそ言えることがある。

優しさだけでは生きてはいけない。

自分の心の解放は、ときに自分を守る術になるのだと。

「誤解だよ依舞稀。僕は今も昔も依舞稀を……」

「アンタの気持ちなんてどうでもいいのよ」

光星が今、どんな気持ちでここに立っているのか。

「人の気持ちを考えられない人間の気持ちなんて、私には何の興味もない」

光星が今、どんな気持ちを依舞稀に持っているのか。

「待ってくれよ……。依舞稀はそんなことをいう子じゃなかっただろ?」

そんなことはもはや何の理由にもなりはしないのだ。

「一体いつの話をしてるのか知らないけど、確かにこんなこと言うのは初めてかもしれないわ」

優しく誠実に生きてきたつもりだった。

あの大変な時期でも、人に感謝する事だけは忘れずに生きてきた。

どんな人でも必ず良いところはあって、自分と関わっている以上は何かしらの影響を与えてくれていると思っているからだ。

だからこそ、他人にこんな感情を抱くこと自体が本当に初めてなのだ。

もう二度と関わり合いたくないし、思い出したくもない。

「冷静になって話そう?ちゃんと僕の言葉を落ち着いて聞いてくれれば理解してもらえるはずなんだ」

もう限界だ……。

きっとコイツには言葉を選んではだめなのだろう。

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