契約結婚!一発逆転マニュアル♡
「総額二億五千万ほどになります」

「二億……?」

想像もつかない金額が弁護士の口から発せられ、依舞稀の頭は真っ白になってしまった。

四十九日法要が終わった後、無理やりついてきた光星と実家の整理をしていたところに、緒方医院の顧問弁護士が訪ねてきた。

今後のことで大切な話がしたいと言った弁護士の口から語られたのは、とても理解できない内容だったのだ。

「緒方先生は、最新の医療器具を購入されたばかりでした。もちろん緒方先生の腕があれは早い段階で完済ができたのですが」

五十代後半で白髪の弁護士は、老眼鏡を外しながら溜め息をついた。

「残念ながら緒方先生には腕の立つ後継者はいないようですし」

チラリと依舞稀を見る目が冷たく見えたのは、依舞稀の気のせいではない。

一人娘だというのに跡を継がないどころか、医師免許も看護師免許もない小娘だとは呆れてしまう。

これでは緒方先生も報われないだろうに。

弁護士はそんな心の声をひた隠しにしていたが、人を見る目を養ってきた依舞稀には、目の奥までは隠せなかったようだ。

「いくら新品同然といっても、医療器具の中古品となりますと価値はかなり下がります。しかしながら、幸いお嬢さんにはあの病院は必要ないでしょうし、家も出てらっしゃいますから、預金も合わせ全てを処分するということになりますと、半額以上は返済できると思います」

テーブルに並べられた書類を、依舞稀は呆然と眺めていた。
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