契約結婚！一発逆転マニュアル♡
「……すご……」

依舞稀は目の前に広がっているお屋敷のような家に目を丸くした。

結婚して遥翔を身近に感じすぎていたのかもしれない。

忘れていたが、遥翔は桐ケ谷グループの御曹司なのだ。

確かに遥翔と二人での生活も、一般的に考えるとかなり裕福である。

しかしこの豪邸を目にしてしまうと、やはり桐ケ谷グループの桁違いさに呆気にとられてしまった。

「こんな家、ドラマでしか見たことないです……」

今からこの家に自分が入り、遥翔の両親と初めて顔合わせすると考えると、緊張で足が震えてしまう。

「固くなる必要はない。立派なのは外枠だけで、両親は気さくで明るい人だから」

「みんなこういう場面ではそう言って、気を紛らわせてくれてるつもりなんでしょうけど、実際は全然効果なしです……」

頬を強張らせながらぎこちなく笑う依舞稀の手を、遥翔はそっと握ると門へと向かった。

立派な門を通過すると、繊細に手入れされたバラの庭園が二人を迎えてくれる。

春になればきっと、ここは美しいバラで埋め尽くされるのだろう。

玄関のドアの前に二人で立つが、遥翔に繋がれた依舞稀の手のひらは、すでにしっとりと汗ばんでいた。

「心臓が飛び出そうです……」

「大丈夫だって。依舞稀なら絶対に気に入ってくれるから。いつも通り、俺に微笑んでいてくれさえすれば問題ない」

そんなことで全てうまくいくのなら、いくらでもニタニタ笑ってやるのに。

依舞稀は心の中でそう思いながらも眉を寄せてぎこちなく口角を上げた。
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