契約結婚!一発逆転マニュアル♡
権利も何も、どうして今さらそこを気にするのだろうか。

今まで私のことや私の周りのことも関係なく、散々踏み込んできていたくせに。

今さら謙虚になる遥翔が依舞稀には理解できなかった。

「回りくどい言い方は好みません。言いたいことはハッキリとおっしゃってください」

高圧的な言葉ではなく、気取った物言いでもなく、初めて自分で選びながら言葉を紡いでいる遥翔にとって、ハッキリものを言うということがこんなに難しいことなのだということを初めて痛感した瞬間であった。

「確かに、社長になるためには契約結婚は必要不可欠だと思っている」


まずは結婚をしないことにはスタートラインにさえも立てない。

「でも俺は、その相手はお前がいいと本気で思っているんだ」

自分の利益のために考えていた結婚が、いつの間にか本当に依舞稀と結婚したいと思うようになった。

自分と一生を共にする人ならば、それは依舞稀がいいと、本気で願うようになるとは、遥翔自身も驚くべきことであった。

「本当の愛妻家がどういうものなのか、正直言って今の俺にはわからない」

愛妻家になれと言われても、何を基準として愛妻家と呼ぶのか。

本気で人を愛する事ができなかった遥翔には理解できない。

「わからないけれど、お前となら。相手がお前なら、自分なりの愛妻家というものになれる気がしてるんだ」

遥翔の偽りのない言葉に、依舞稀の心が大きく揺らいでしまう。

まるで本当に自分を求めていると言われているようだ。

「お前が俺を愛妻家にしてくれないか?」

そんなことを言われてしまったら。

依舞稀は無意識のうちに「はい……」と答えてしまっていた。
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