侯爵令嬢は殿下に忘れられたい!
1 運命のお茶会



侯爵家の次女であるクラリスは何度目かのため息をついた。

「私宛で間違いないわよね…」

もう一度宛名を見るが間違いなくそこにはクラリスと私の名前が書いてある。

クラリス宛に一通の手紙が送られてきた。

内容はお茶会の招待だが差出人が問題なのだ。
この国の第一王子であるルバート殿下からなのである。

きっとルバート殿下の年齢からしてそろそろ婚約者を見つけるためにちょうど良い身分と年齢のご令嬢を招待してお茶会をするつもりなのだ。

そして、そのちょうど良い身分と年齢であるクラリスにも手紙が届いた。

私の場合はルバート殿下とはお会いしたことないし、ただの数合わせで呼ばれたのだろうけれど。

将来の王妃の座も殿下に興味ないのでそれは別にいいが問題は私が完璧令嬢と呼ばれていることにある。

この国にはたまに特別な力を持って生まれる者がいる。その特別な力は人それぞれ違う。

そして、クラリスもその力を持っているのだがそれは忘却の力だ。

相手からクラリスに関する記憶のみ忘れさせることができる。

この忘却の力はとても便利で、例えば人の前で失態を犯した時には、相手にそのことを忘れさせてしまえばいい。

そうやって今まで都合の悪いことを忘れさせてきたクラリスはいつの間にか完璧令嬢と呼ばれるようになってしまった。

自業自得であるが自分の評判を上げすぎてしまったため最近は人前に出るのは極力控えているのに殿下から招待されてしまっては参加するしかない。

完璧令嬢でいられる自信がないわ…。

殿下に気に入られようと自分を良く見せて他人の粗探しをする令嬢たちの前では忘却の力を使う時間なんてない。

それに何が怖いって忘却の力を持ってることが知られたり、他にも能力を持っている令嬢がいた場合よね…

特別な力は持っていることが知られると悪用される可能性があるため、力を持っていることを他人に口外してはいけない。

そのため特別な力を誰が持っているか、どんな力なのかまったくわからないのだ。

忘却の力は忘れさせる力だがある意味騙しているようなものだ。

身分の高い令嬢たちの前でバレたら間違いなく一気に拡散されて私の居場所はなくなり修道院行きになってしまう。
殿下がいらっしゃるから下手したら爵位も取り上げられて一族路頭に迷うかもしれない。

今回は力を使わないで乗り切るしかないわ!

力を使わないと決めたクラリスだが残念ながらお茶会で力を使うことになる。

< 1 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop