片思いのあなたに再会してしまいました
1.再び会ってしまいました
地方勤務を言い渡されてから5年。
夢であった広域事業担当として本社での勤務が決まり東京へと帰ってきた。
5年以内に本社に移動ができれば優秀だ、という言葉を信じて、今まで脇目も振らずただひたすらに仕事に取り組んできた。
大学時代の友人にはもう結婚をして子供が生まれた子もいる。
SNSで近況を知るたびに少し羨ましいような気もしていたけれど、私はその道を諦めた代わりにしっかりと仕事で結果を出している。
自分にそう言い聞かせて、不安定な足元でも踏ん張って一歩ずつ着実に歩んできた。
そのことが今報われたんだ。
そびえ立つビルを見上げて感動した。
これから私の新しい人生が始まる。
漫画じゃないけど、本当にそんな気がしたのだ。

「本日付けでこちらの部署に配属となりました。石田詩織と申します。まだわからないことばかりでご迷惑をかけることも多いと思いますが、早く戦力になれるよう努力します。よろしくお願いいたします。」

私が慣れない様子でした挨拶にも職場の同僚は皆にこやかだった。
良かった、ここなら頑張れる。
ひととおりの自己紹介が終わって自分のデスクに案内され、おおかたの説明を受ける。
働く場所が違うとしても同じ会社だからやり方は大体同じ。
これなら思ったよりも速く仕事に慣れることができそうだな、と安心した。
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