片思いのあなたに再会してしまいました
3.一緒に飲みに行ってしまいました
悩んだところで簡単に答えが出せるわけはない。
だって6年間も見ないふりをしていたのだから。そんな年季の入った拗らせた問題がちょっと友人とお酒を飲んで、土日中考え抜いたところで答えが出せるわけない。たかが知れている。

次のエブリデイとの商談は1週間後。
まだ日野さんは同行してくれることになっているけれど、あくまでも担当者は私だから話を主導で行わなければいけない。

憂鬱だ………。本当に憂鬱。
これはもしかしたら仕事を始めて以来のピンチなのではないだろうか?
私の持ち味は、自分で言うのもなんだが相手の懐に入り込むようなそんな営業方法。
ただ仕事をするだけではなく、しっかりと仲を深めることから始める。
そうすれば相手も心を開いてくれて、こちらのお願いもよっしゃ聞いてやるか!というような流れになるのだ。
しかし、しかしだ。
このままでは相手の懐に入り込むなんて無理。
なんといったって避け続けて来た相手だ。
日野さんにはうまくやります的なことをほざいたけど実際には詰んでると思う。

はぁ、、
私はため息をついた。

「石田さん大丈夫?配属早々追い詰められてる感じ?」

聞こえてないと思っていたら、バッチリ聞かれていたようだ。

声をかけて来たのは2年先輩の片倉了さんだ。
同じチームでエブリデイ担当。
私がレジ横スナックで、片倉さんはお弁当担当。
お弁当の方が提案の幅が広いし取り扱い商品も多いから大変そうだが、片倉さんはとても仕事ができる人らしくいつもゆとりがある。

「ええ、まあ。初めての広域での仕事がエブリデイっていうので少し不安というか。ちゃんと提案ができるのかなって心配で。」

「まあ誰でも最初はそうだよね。俺もここ来て初めはまじでなんもできなかったからね。で、具体的には何が不安なの?」

ここのチームがいいなと思うのは、当たり障りのないアドバイスで終わらせないことだ。
私が不安だとかわからないとか言っても最初はそうだから、慣れだよ。といったいった適当なアドバイスは絶対にしないで具体的に聞いて解決しようとしてくれる。
今だってそう。
だから相談もしやすいのだ。

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