片思いのあなたに再会してしまいました
6.あなたの気持ちを知ってしまいました
しばらく私はお手洗いから出ることができなかった。
何が起きたのかわからず激しく動揺していた。

恭さんに抱きしめられてしまった。
彼が最後に呟いた言葉の真意はなんなのか。

鏡には耳まで真っ赤になった自分が映っていた。

あまりにトイレが長いとみんなに心配されてしまうと思い、冷水で顔の火照りを少しマシにしてから座敷に戻る。
恭さんの姿はすでに無く、明日早くから予定があると言って帰ったと言われた。
その後すぐに回はお開きとなり、周囲は二次会に行くぞ〜とノリノリだったが、とてもそんな気分にはなれなかったためお暇することにした。

数人に別れを告げて、まだまだ人通りも多い繁華街を歩いていると背後から石田!と声をかけられ振り返った。

「槙さん、二次会行かれないんですか?」

槙は恭さんの親友である。高校生からずっと2人は同級生で、おそらく沙織と真帆以外で唯一私と恭さんの事情を知っているであろう人物だった。

「俺も二次会はパスした。代わりに石田に話したいことがある。」

私たちはすぐ近くにあった比較的落ち着いた雰囲気の居酒屋に入った。
おそらく槙が私に話したいことは恭さん関連のはずだから、静かで落ち着ける場所の方がいいと思ったのだ。

「それで話っていうのは、多分気が付いているとは思うけど恭平のことだ。」

彼はいきなり切り出してきた。

「お前らがどうもよそよそしいし、さっきお前の彼氏と話してたときの恭平の様子もおかしかった。お前らが偶然同じタイミングでトイレに行って、それで恭平は帰ってきたらさらに様子がおかしくて、それで帰った。そんでその後トイレから帰ってきたお前もおかしい。」
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