出逢いがしらに恋をして
 どうにか持ちこたえて、無事、48階に到着。

 その超弩級世界遺産なみのイケメン氏は、
 開いた扉に手を添えて「どうぞ」と目で合図した。

 レディーファーストの仕草も堂に入っている。

「ありがとうございます」
とわたしは小声で答え、そそくさと横を通り過ぎようとした。

「あっ」
そう言って、彼の手がわたしに向かって伸びてきた。

 な、なに?

 驚いて見上げると、その人は優しげに目を細めた。

 「失礼。これがついていたので」

 男の人らしい骨ばった長い指に挟まれていたのは、小さな枯葉。

 うわ、こんなのつけて歩いてたのか。

「あ、ありがとうございます」

 あまりの恥ずかしさに、わたしはまともな挨拶も返せず、エレベーターから飛びだした。

 はあー。まだ心臓がどきどきしてる。
 
 ここまで完璧な造形のイケメンにお目にかかったのは生まれてはじめて。
 
 おかげで朝から目の保養ができた。
 
 今日はツイてないと思ってたけど、案外ツイてるのかもしれない。
 
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