出逢いがしらに恋をして
 地下鉄はいつも通り混んでいた。

 つい、この間の”心臓破裂寸前壁ドン案件”を思い出してしまう。

 もしまた、あんなことがあったら、今度こそご臨終だ。

 でも、それは取り越し苦労だった。

 今日は車両の中ほどまで進むことができて、並んでつり革につかまった。

 前に座っていた女子高生が、宮沢さんを見てハッとして、
 もう一度まじまじと見つめてから、顔を赤らめている。

 よくわかるよ、その気持ち。

「店舗選択はだいたい固まってきたんだけど」
 宮沢さんが話しはじめた。

「目玉にするスイーツの店がまだ決まらなくてね」

 そうこうしているうちに、多くの人が乗り換える駅についた。

 あれからずっとチラ見していた女子高生は、名残惜しそうに降りていき、
 その隣の席も空いたので座ることにした。
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