レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
リディアは,カルロスの身を案じていた。
彼は今日,従者を(ともな)って港町シェスタへ出かけると言っていた。けれど,伯父であるサルディーノ宰相は迎賓館に残るらしい。
彼はスラバットの王の座を虎視(こし)耽々(たんたん)と狙っているのだ。そのために,自らの甥を手にかけることも(いと)わないだろう。
彼は狡猾(こうかつ)な男だ。自らの手を汚さずとも,シェスタまで刺客(しかく)を放つ可能性も充分考えられる。
リディアは万が一の事態に備え,ジョンにカルロスの護衛を頼むつもりでいた。
「護衛」といえば,一番の適任者はデニスだが,彼はリディアから離れられない(もちろんここでは,「任務上」という意味で,である)。帝都に残ったサルディーノが,甥より先にリディアに(きば)をむく可能性も()()るのだ。
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