レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「わたしは別に構いませんが……。帝国議会の重臣(じゅうしん)達が認めてくれるでしょうか?」
この国の政治は,皇族だけで(つかさど)っているわけではないのだ。帝国議会の承認が得られなければ,皇族は政治的なことは何も決められない。
そして,(すぐ)れた軍人でありながら,優れた政治家でもある父イヴァンは,帝国議会の重臣達から大変(した)われている。本人が「隠居する」と言っても,そう簡単に手放さないのではないだろうか?
「そうだな。重臣達への根回(ねまわ)しはまだこれからだが,そなたへの譲位ならば,彼らもすんなりと認めるであろう。案ずるな」
十二歳の頃から次期皇帝として,父の施政(しせい)を手伝っていたリディアである。さらに,女性でありながら凄腕(すごうで)の剣士でもあり,頭も切れる。まだ若いが,皇帝としての器量(きりょう)は充分に備わっているはずだ。
「はい」
リディアは頷いた。まだ実感は湧かないけれど,近く自分が皇帝になるのだと思うと,身が引き締まる思いだった。

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