レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
2・港町の悲喜こもごも
デニスが見つけた宿は,海岸線のすぐ側にあった。
「いらっしゃいませ!――あらあら,まあ!これはこれは姫様,ようこそお()し下さいました!」
よく太った陽気な宿のおかみは,リディア達三人が町人風の格好をしているにもかかわらず,いともあっさり正体を見抜いてしまった。もみ手せんばかりに,ニコニコと彼女らを出迎える。
「……変装,意味なかったみたいだな」
「そうね……」
デニスとリディアは,そっと(ささや)きあう。
いくら服装を変えたところで,皇族の(あかし)である彼女の髪と瞳の色はよく目立つので,バレてしまったのも当然の結果といえよう。
バレてしまったものは仕方ないので,リディアも愛想(あいそ)よくおかみに挨拶した。
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