俺様専務に目をつけられました。

11.

夏の始まりと終わりには雷が鳴って季節が変わる。
なんて昔の人は言ってたみたいだけど、今や夏になればゲリラ豪雨でよく雷が鳴るから季節の変わり目なんてわかりゃしないな。
だって今日も三時ごろから急に暗くなってきて、ほら雨が降り出した。



「悪いがちょっと待っててくれるか。」

専務室に呼び出され急いで来てみれば『待て』と言われてしまったので遠慮なくソファーで待たせてもらう事にした。今日はちゃんとしたお手伝いできているから。

待ってる間にも外の雨足はどんどん強くなって、雷鳴も聞こえるようになってきた。



私は雷が嫌い。嫌いと言うより恐怖に近い。
七歳の時、一人で留守番をしていた。次第に悪くなってきた天気、雨も降り、雷も鳴りだした。その頃はまだ雷に恐怖は無く、逆に空に稲妻が走るのが幻想的で窓に張り付きよく見ていた。いつもの様に一人でも平気で窓にへばりつき外を見ていた時、ものすごい光と音を放ち隣の家に雷が落ちた。
その一瞬で平気だった雷が怖くなった。

【一人なのにうちの家にも落ちたらどうしよう】

私はリビングでクッションを抱え震えた。暫くすると雷の落ちた家が燃え出した。

【うちに火が移ってくるかもしれない。逃げないと。】

そう思うが外はまだ雷が鳴っており外に出るのも怖くて動けなかった。どんどん隣の家の炎は激しくなっていく。消防が駆けつけ消火に当たりながら周りの家にも避難を促していた。うちのチャイムも鳴ったが、その時にはもう腰が抜けたみたいになって動けなかった。
暫くすると消防隊員が消火のためにうちの庭に入ってきた。そしてその中の一人の人が家の中で蹲って動けずにいる私を見つけた。

「嬢ちゃん!ここ開けて!」

そう言われるが動けない。何度も声をかけられ、なんとか這うようにして窓まで行きカギを開けた。窓が開いた瞬間、ものすごく煙たく焦げた臭いが一気に部屋に入って来てむせた。

「怖かったね。よく頑張った。」

そう言って私を抱き上げ安全な場所まで連れて行ってくれた。
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