俺様専務に目をつけられました。

4.

五月も終わりに近づくと瑠奈たち営業組は先輩と共に外回りに出かける事が多く、お昼の時間もますます合わなくなった。今日は久々に時間が合ったので瑠奈とのランチタイムを楽しんだ。

「あのカフェ、安いし美味しい、メッチャよかった。また行こな。」

うちの会社には社食が無い。だけど会社の周りにはカフェや定食屋さん、コンビニにテイクアウトできるお店がいっぱいあって、どの店もビジネスマンの懐事情に優しい設定金額の所が多いので社食がなくても困らない。
今日も安くて美味しいカフェを見つけて満足し社に戻って来た。

「いつ来てもここはピカピカで気持ちがええなー。」

受付から聞いたことのある声、そして見たことのあるシルエット。
受付嬢に話しかけていたのは・・・・

「おじいちゃん!」

思わず叫んでしまった。
そして私の声を聞き振り返ったその人は、やっぱり祖父の三栗茂三だった。

「あれ?晴ちゃん?」

「晴ちゃん?じゃないよ!おじいちゃん、ここで何してんの?」

「友達を待っとる。晴ちゃんこそ。」

「仕事に決まってるやん。ここ私が働いてる会社!てか、おじいちゃん八十三歳だよ、友達ってこんなとこで働いてる人おらんやろ。」

「おるし。今日はいっちゃんと約束しとるし。」

はっ?いっちゃんって、おじいちゃんの住んでた田舎に戦時中に疎開して来て仲良くなったって言ういっちゃん?
いやいや、いっちゃんも同い年だって言ってたから八十三でしょ?こんなとこに勤めて・・・

「茂ちゃんお待たせ。・・・・なんかあったか?」

エレベーターから降りて来たのはビシッとスーツを着こなした品の良いおじい様。そのおじい様が『茂ちゃん』って呼んだ?
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