夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

アラン様は本当に、信じられない位にお変わりになられた。
そんなアラン様を目の当たりにして、私の中に迷いが生まれる。アカリ様から前の旦那様(ヴァロン様)とのお話を聞いた時、何とかお力になれないか?と悩んだ私にとって、アラン様からのこの(めい)は嬉しい事。それなのに……。

「……それで、本当によろしいのですか?」

私の口からは、またも信じられない聞き返しの言葉が出てしまっていた。
何故こんな事を聞いてしまったのか自分でも不思議だった上、アラン様にしたらきっと差し出がましい質問。そう思われると思った。

暫しの沈黙の後に視線が重なって一瞬ビクッとするが、フッと柔らかく浮かんだアラン様の微笑えみに私は瞳が逸らせなくなる。
何故ならそのお姿が、大好きな私の父に雰囲気がとても似ていたからだ。母を愛し、私達家族を大切にしてくれた父に……。

ーーこの方は本当に本当に、アカリ様を大切に想っていらっしゃるのだ。

「彼女はオレに涙を見せてはくれない。オレには、涙を拭ってやる事は出来ない
……だから、頼む。オレの代わりにアカリ様の涙を拭ってやってくれ、スズカ」

お姿からも、言葉からも溢れてくる美しい愛に、胸がトクンッと高鳴る。
初めて名前を呼んで頂き与えられた、私への(めい)。……いや、これはお願いだ。
< 162 / 338 >

この作品をシェア

pagetop