諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 そんなわけでここ半年忙しくてろくに静菜とゆっくりできていなかった俺は、久しぶりに自宅で彼女とのんびりとした時間を過ごしていた。

「静菜」

「は、はい」

 名前を呼ぶだけでいちいち飛び上がる彼女に、俺は内心噴き出しそうになるのをぐっと堪える。

 俺が想いを伝えるまでは、いつも自分からまとわりついていたくせに。この怯える小動物のような生き物を、どうしてくれようか。

「もっとこっちに来い」

 俺が強引に肩を引き寄せると、彼女が「きゃっ」と驚きの声を上げる。

「急にどうしたんですか?」

 照れてこちらを見上げる彼女の頬は、茹蛸のように赤く染まっていた。
< 193 / 199 >

この作品をシェア

pagetop