諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「お久しぶりです。お会いできるのを楽しみにしていました」

 息を弾ませて告げる。すると、数か月ぶりに会う婚約者の理人さんは、露骨に迷惑そうな表情を浮かべた。

「……そうか。俺はお前に会うと思ったらここ数日間は夢見が悪かったぞ」

 相変わらずつれない。私は今日が来るのをずっと心待ちにしていたというのに。

 それもそうだ。私が理人さんに会えるのは年にたったの三回だけ。幼少期に両親たちが決めた、私と理人さんの誕生日。そして、クリスマスというのが暗黙の了解になっていた。

 いつからか、それ以外の日にも私から誘うようになったけれど、理人さんがOKをくれたことは一度もない。

 学生の頃は習い事や部活を理由に。働き出してからは、『仕事が忙しい』のひと言が返ってくるようになった。
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