偽りの愛で、永遠の愛を誓います
帰りの車の中、私たちの間に会話はない。

どちらも無言で、痛いくらいの沈黙が突き刺さる。

「なぁ、琴葉」

その沈黙を破ったのは、蒼弥さんだった。

「なんですか?」

「お前は、俺と一生過ごしていく覚悟はあるか。偽とはいえ、結婚式を挙げてしまったら、もう後戻りは出来ないぞ」

「わかっています。でも、それが決められた道ならば、私はそれに抗いません」

それは、私の本音だった。

最近、蒼弥さんに対する気持ちの変化に私自身、とても驚いている。

だけど、愛しているかと言われれば、そうではないし、結婚もしたいとは思わない。

「琴葉、家に帰る前にちょっと寄りたいところあるんだけどいいか?」

「えぇ、いいですよ」

しばらく車を走らせて辿り着いたのは、蒼弥さんの会社。

私は車で待っているつもりだったが、なぜか一緒に行くことになった。

「蒼弥さん、私が行く必要ありますか?」

「あぁ。琴葉にお願いしたいことがあるんだ」

「それって、悪いことですか?」

「まさか。悪いことなんかじゃないよ」

蒼弥さんは、クスリと笑ってパソコンを立ち上げた。

何をするのかと思って黙って見つめていると、企画書のような物を手渡された。

「これは、今我社が全力で取り組んでいるプロジェクトだ」

「どうして、これを私に?」
< 9 / 9 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop