【短】きみとかえるのおしまい
ランチの場所は適当。気分。なんとなく。
今日は天気がいいから中庭にしよう!
とケイちゃんの意見で中庭へ。
ひなたぼっこをしながら購買での戦利品を食べる。
焼きそばパンとジャムパン。おにぎりは鮭。
どれもわたしの好み。
「あまったらおれがもらうから」
「うん、ありがと」
口角が思うように上がらない。
リョクくんは変わらず優しいのに、その優しさが苦しい。まるで毒みたい。
「ほんっと、リョクってばエルにだけは甘々だよね〜」
「好きなやつ以外に優しくしてどうすんだよ」
イヤミったらしく冷やかすケイちゃんの頭を小突いて、リョクくんは鼻で笑った。
ふたりはわたしの知らない顔をしていた。
わたしには絶対に見せない顔。
ふたりだから見せる顔。
わたしをはさんではしゃぐふたりを直視できない。
好きって、何。
気をまぎらわそうと手元にあるジャムパンを頬張った。
甘い。甘ったるい。
それが、とても、
――キモチワルイ。
「ああっ!」
突然ケイちゃんが声を上げた。
ビクリとして見やれば、目を輝かせて渡り廊下を凝視していた。
渡り廊下のほうへ視線を移す。
……あ、ノブくんだ。
「ちょっと行ってくるね!」
ケイちゃんは飛び上がり、嬉々としてノブくんのところへ走っていた。
ケイちゃん、笑ってた。
それはリョクくんに見せるものでも
わたしに見せるものでもなくて
心なしか無理してるような。