アテナ・イェーガー〜ダンス、のちにキス〜
初めて見る祭りに、アテナは初めて街を見た時よりも辺りを見回していた。ロネは「はぐれちゃうよ」と手をまたつなぐ。

祭りには大勢の人がいる。その多くの人はアテナの正体を知れば恐れたり差別をしたりするだろう。しかし、今だけはアネナを普通の女の子にしてほしいとロネは強く願った。ギュッとアテナの手を握る。

「……あれ食べたい」

アテナが指差したのは、パン屋のサンドイッチだった。長い行列ができている。おいしいと評判のパン屋だ。

「いいよ、並ぼう!ツナサンドが一番人気なんだよ〜!」

「ツナサンド……」

列に並び、ロネはアテナにネイサンやナタリーと祭りに行った時のことなどをたくさん話した。

「俺たちが七歳の頃、ナタリーがはぐれちゃってさ〜……。俺とネイサンが必死で探してたらナタリーは歌いながらのん気に空飛んでてさ〜」

「あの人らしい」

アテナはたまに笑ってくれて、ロネは嬉しくてたくさん話してしまう。あっという間にロネたちの番になった。
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