千景くんは魔法使い


そして昼休み。廊下を歩いていると、女子たちはまた千景くんのことを話していた。

「なんか3組の上田さんが告白したんだって!」

小学生の時は好きな人に告白するなんて大人の世界のことだと思っていたけれど、中学生にもなれば彼氏彼女がいる人も珍しいことじゃない。

早い人では休みの日にデートをしたり、お互いの家にも遊びに行ったりしてるそうだ。

千景くんが誰かに告白されたという噂は、これで何度目だろうか。

同級生や先輩。さらには先月入ってきたばかりの一年生にまで千景くんが呼び出されていたという目撃情報もある。

でも、千景くんは誰とも付き合わない。

とても可愛い子でも、美人と評判の先輩でも、千景くんはいつも告白を断っている。

……もしかして千景くん、好きな人いるのかな。

チクンッ。

そうなのかもしれないと思ったら、胸が少しだけ痛くなった。

もう、私ってば、なにをひとりで考えてるんだろう。

気持ちを切り替えるために、パンパンと両手で頬を叩く。

「……あ」

と、その時。窓から見えた中庭である人を見つけて、私は急いで昇降口へと向かった。

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