千景くんは魔法使い
千景くんの✫*゚★.*。✫こころ
学校に着くと、教室はいつものように騒がしかった。すでに千景くんは登校していて、自分の席に着いている。
「おはよう、花奈」
「う、うん。おはよう!」
元気よく挨拶したものの、昨日交わしたちっちとの会話が頭から離れない。
――『魔法は、その力を日に日に強めていくものだから。このままだと千景くんは魔法に支配されてしまうかもしれないね』
ちっちは脅すために言ったんじゃない。そうなってほしくないから私に忠告してくれた。
また千景くんの意思とは関係なく魔法が飛び散ることが起きれば、今度こそけが人が出てしまうかもしれない。
「あ、あの、千景くん」
「うん?」
「……魔法……う、ううん。体のほうはもう平気なの?」
「うん、大丈夫だよ」
「そ、そっか!」
私は不自然に明るい返事をして、カバンを机の横へとかけた。
千景くんの魔法がまた暴走するかもしれないなんて、言えない……。
昨日だって中途半端になってしまったさんぽのことを気にしていたし、ちっちが喋ったことだって、千景くんの本意によるものではない。
わざわざ注意するようなことを言って不安を煽るようなことは言うべきではないと、言葉を喉の奥へと押し込んだ。