転生したら極悪非道な皇帝の妻になるが実は、ただのツンデレでした!?(9/29に修正済み)

「行っちゃったね……」

「あぁ……そうだな」

 私がそう言うとあの男も頷くように答えてきた。
これで私は、二度と元の世界に帰れなくなったのだろう。
寂しくもあり、懐かしくもあった。
 しかし思ったよりも悲しくないのは、この男のぬくもりのせいだろうか。
 繋がられたは、今もギュッと繋いでくれていた。

「本当に良かったのか?俺のせいでもあるが……」

 申し訳なさそうに言ってくる。
私は、小さく横に首を振った。そしてニコッと笑った。

「私は、自分で決めて残ることにしたの。
あなたのせいではないわ。それに……スッキリしたの」

 ずっとモヤモヤした気持ちが取れた気分だった。
何処かで、そうなるような予感がしていたのかもしれない。
 私がこの男の意外なギャップや想いに気づいた時は、
すでに恋に落ちていたのだ。

ただ認めたくなかっただけ。
 意地を張ることで自分は、この世界の人間ではないと境界線を張っていたのだろう。
 でも、もうその必要はない。私は、この世界で生きて行くと決めたのだから。

「さぁ中に入りましょう。身体が冷えちゃうわ」

 私は、あの男の手を引いた。
彼は、ちょっと驚きながらもクスッと笑う。
 「あぁ、そうだな」と言いながら……。

これでいい。ここは、私が生きて行くと決めた世界。
 不安がない訳ではない。でもそばに、この男が居てくれる。
それに放っておけないもの。
 だから……遠い故郷で見守っていてね。お母さん……お父さん。

 そう思いながら夜空を見た後に
私達は、そのまま宮殿の中に入って行くのだった。

 その夜は、お互いに想いをぶつけ合うように、ただ愛し合うのだった。
 抱き締めながら眠りにつく頃には、すでに日時が変わっていた。
寄り添いながら、そう遠くない未来の夢を見ていたのだった。

< 120 / 130 >

この作品をシェア

pagetop