セレナーデ ~智之

車の中話す 会えなかった時間。


智之と過ごした夏を 麻有子も 愛おしんでいたことを知る。



「智くんが来なくなって 夏休みは すごく寂しかったよ。」


と麻有子が言った時 智之は 空しかった日々の 全てを超えた。


車の中じゃなかったら。

運転していなかったら。

多分 そのまま抱きしめていた。


『ごめん、子供だったから。麻有ちゃんを 守れなくて。』


まだ言えない言葉が 心で反響する。
 


麻有子が卒業した大学は 


智之の大学と 私大の両雄と言われる名門。



地方から 合格するまでの 計り知れない努力に 智之の胸は痛む。


そして 智之の大学ではなく その大学を目指した 麻有子の悲しみ。



麻有子も 智之と会えなかった時間に 苦しんでいたことを確信する。
 
 



< 32 / 91 >

この作品をシェア

pagetop