セレナーデ ~智之

その日の昼過ぎから 陣痛は始まって 智之が退社する頃に
 

「陣痛の間隔が 短くなったから 今から入院するね。」

と麻有子から 電話が入る。


会社から直接 病院に行った智之。


意外と元気に 落ち着いている麻有子は 陣痛の合間に 母とおしゃべりをして 笑っていた。
 

「麻有ちゃん、大丈夫。」

智之が聞くと 
 

「初産だから 時間がかかるって。」

と平気そうに答える。


でも 陣痛の波が来ると 苦しそうに顔を歪めて 痛みに耐える。
 

「こんなに苦しそうで 大丈夫なの?」

と智之が母に聞くと 
 

「まだまだ これからよ。こんな痛みが 一晩中続くのよ。」

母は 静かに 麻有子の腰を 擦りながら言う。
 

「智之 今のうちに 下のレストランで 食事してらっしゃい。」

母の言葉に 麻有子も頷いて言う。
 

「長くなるから。体力 付けておいてね。」
 

「俺が 体力付けて どうするんだよ。」

と苦笑しながら 智之は 素直に食事に向かった。



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