セレナーデ ~智之

智之は 定時で退社して 病院に寄る。


麻有子に会いたくて 赤ちゃんに会いたくて 


一日中 そわそわしていた自分を笑う。
 


「名前なんだけど。絵里加ってどう?」

病室に入ると すぐに 赤ちゃんを抱き上げて 智之は言う。
 

「絵里加。絵里ちゃんね。うん。可愛くていい。この子に合っているわ。」

麻有子も 笑顔で賛成する。
 

「絵里ちゃん。よしよし、いい子だ。」

大きな黒目で 智之を見つめる赤ちゃんは 智之の言葉に 答えているようで。
 

「親父達にも 話してみるよ。問題なければ 絵里加にしようね。」

麻有子と赤ちゃんを 交互に見て言う智之。

麻有子も嬉しそうに頷く。
 

「絵里加って 何か 意味があるの?」

麻有子は聞く。
 

「女の子だから。響きと 漢字のバランスが 綺麗な名前がいいなと思って。この子 絵里加っていう顔しているから。」

と智之は得意気に言う。


麻有子は笑いながら、
 

「でも 本当に 絵里加って感じだわ。絵里ちゃん 絵里ちゃん。」


と早速 2人で呼んでしまう。
 


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