セレナーデ ~智之

「麻有ちゃんの 安産には 驚いたよ。ゆっくりしていたら 家で産まれていたよ。」

翌日は 土曜日で。


智之は 両親と 麻有子を見舞う。


兄夫婦が 絵里加を 見ていてくれる。
 


「赤ちゃんが せっかちなのよ。智くんに似て。」

麻有子は 照れた笑顔で みんなに言う。
 

「絵里加姫に そっくりだね。男の子なのに 端正な顔しているよ。」

赤ちゃんを 抱いた父が 嬉しそうに言う。
 

「絵里ちゃん 大丈夫ですか?」

麻有子が 聞くと 母は 笑顔で頷く。
 

「昨夜は 紀之が 3人、お風呂に入れて。その後 すぐに眠ったわ。ずっと 樹達と騒いでいたから。絵里ちゃんも 疲れたのね。」


両親だけでなく 兄夫婦も 協力してくれるから。

麻有子も絵里加も とても心強い。
 


「可愛いなあ。絵里ちゃんも こんなに 小さかったんだっけ。」

父の腕から 赤ちゃんを 抱き取って 智之は言う。
 

「本当。絵里ちゃんより 大きく産まれたのに。最初は こんなに小さいのね。」

智之の腕の中 大きな目を 開けている赤ちゃん。


母はそっと 頬に触れて言う。
 

「智之、名前は決めたの?」

父に聞かれて 智之は 頷く。
 

「壮馬。どうかな。」

赤ちゃんを 母に預け 

手帳に 書いて見せる。


両親と麻有子は 微笑み合って 頷く。
 

「いい名前。この子に ぴったり。壮君ね。」

麻有子は 母に抱かれる 壮馬を 覗いて言う。
 

「本当。品があって 力強くて。とっても良いわ。」

母も笑顔で言う。
 

「廣澤壮馬。響きも良いね。」

父の言葉に 智之は 満足そうに頷く。
 

「壮君、壮君。」

まるで 智之の声が 聞こえるように 首を動かす壮馬。



みんなが 驚いて 笑い声を上げる。

新しい家族の誕生。


みんなが 喜んで 迎えてくれる。
 


これから始まる 壮馬の人生。


俺は 両親に してもらったことを 

必ず 壮馬に返す。

麻有子と 一緒に。


俺達のもとに 生まれてきて 良かったと 

壮馬に 思われる 親になる。



四人家族が 整った喜びと 責任。


温かな幸せに 智之は身震いしていた。
 
 






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