社長宅の住み込みお掃除係に任命されました
「八代、お前、こんな時間にこんな所で
 何してんだよ」

そう言うのは、さっきまで顔を突き合わせてた社長だった。

「す、すみません!!」

私は、即座にベッドから立ち上がって、頭を深く下げた。

「バカ。謝れって言ってんじゃねぇよ。
 なんで、こんな時間にこんな所にいるのか
 って聞いてんだよ」

社長は戸口で足をさすりながら、尋ねる。

「あの、これには、事情があって……」

「だろうな。
 俺だって、理由もなくお前がこんなことする
 とは、思ってねぇよ」

ゆっくりと歩いて来た社長は、私の頭にぽんと手を置いて、顔を覗き込んだ。

「聞いてやるから、言ってみろ」

私は、ぽつぽつとこの1週間に起きた出来事を語った。

黙って聞いていた社長だったけれど、最後まで聞き終えた時、

「バーカ」

と私の額を小突いた。

えっ!?
よりにもよって、バカ!?
慰めとか同情とかないの?

「バカなのは分かってます。
 全部自業自得です」

私がむくれて言うと、社長はその一見強面にも見える顔をくしゃっと緩めて優しく笑った。

「バカ。そんなこと言ってんじゃねぇよ。
 なんで昼間言わねぇんだよ」

社長は、私の髪をくしゃっとかき混ぜる。

「ほら、帰るぞ。来い」

「え? どこに?」

「だから、俺んち。
 お前1人くらいいつでも泊めてやるよ」

えっ……

だって、男の人の部屋……

「む、無理です!」

私は必死に首を振る。

「は!?
 まさか、お前、俺がなんかすると思ってる?
 随分な自信だな」

「う……」

そう言われると……

言われてみれば、私なんかが社長みたいなイケメンで地位も名誉もお金もある男性に相手にされるわけないですよね。

「ほんとに、何もしません?」

「しつこいなぁ。
 して欲しいのか?」

私は慌てて首を横に振る。

「なら、大丈夫。ほら、着替え全部持ってこい」

「はい!」

私はベッドを片付けると、いつものようにパタパタと更衣室へ駆け出した。

で、気付いた。

私、ノーブラ! 部屋着!

キャー!!

もう、穴があったら入りたい。





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