何度生まれ変わっても、君と愛を始めよう
「君の名前は?」

村雨の言葉に、桜鈴は緊張したように自分の名前を言った。村雨は妖艶な笑みを浮かべ、桜鈴の手を取る。

「君は私の屋敷で白拍子として舞ってくれ。これは命令だ」

時雨の嫌な予感は的中した。村雨の言葉に逆らえるものなどいない。桜鈴も戸惑いながらも仕方がないと言いたげな目をしている。

「時雨、構わないだろ。白拍子なんて大勢いるんだから」

「わ、わかりました……」

村雨の言葉に時雨は最後まで反論することができなかった。村雨はそのまま桜鈴にこの屋敷を出る日などを伝え、舞殿を出て行く。

「時雨様、私……」

「とりあえず、着替えて来い」

泣き出しそうな目をする桜鈴を抱き締め、震える声で時雨は言う。桜鈴は頷き、着替えるために舞殿を出て行った。

時雨は誰もいなくなった後、その場に倒れるようにして座る。悲しみや怒り、色々な感情が時雨の中に押し寄せて来る。

「時雨様……」

どれほど時間が経ったのか、時雨は豪華な十二単に着替え終えた桜鈴に背後から抱き締められていた。桜鈴の声は時雨のように震えている。
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