2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






この妖はまだ私が能力者だと気づいていない。
もし気づかれていたらおそらく気づいた瞬間に私は殺されていた。
そうしなければ妖自身の身が危ないはずだからだ。

今の私にはハンデがある。
鎖の長さは2メートルほど今は座っているからそこまでの圧迫感はないが、立てばおそらくピンピンに鎖が張られて移動は難しい。

そんな状態ではいくら私でも武が悪すぎる。

ここは非能力者であることを信じさせなければならない。


「…怖いのかな?ふは、怖がる人間の女の子は本当にいいなあ。美しければ美しい程にね」


妖が私の首に触れる。
そしてその鋭利な爪で私の首を浅く切り裂いた。


「…っ」


こんな小さな傷一つで怯える私ではないが、ここはさらに顔を青くして見せ、ますます妖を油断させるように演技を続行する。

一番手っ取り早いのはこの妖の首を焼き消してしまうこと。妖を唯一倒せる弱点はそれだけだ。なので学校で行う実戦もチョーカーを壊すことが勝利の条件とされている。

だがこの身動きが取れない状態では首を燃やし切る前に私がやられる。
…火の力は攻撃力も馬力も能力の中ではトップクラスだが、使い勝手が非常に悪いのがネックだ。

だからまずは私自身に集中させ、バレないように能力を行使し、鎖を焼き溶かし、私の自由を確保することが最優先事項である。


「…た、たすけて」

「くく、ははははっ!助けなんて来ないよ、人間。お前は俺に遊ばれながらゆっくり死んでいくんだ。お前は顔が美しいからその顔をもらってあげよう」


恐怖で怯えた目で妖を見ればそれを面白がるように妖は大きく笑った。










< 101 / 296 >

この作品をシェア

pagetop