2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






私の部屋の扉を一瞬で灰にした犯人は誰だかわかっていた。
だからこそ何故、と驚きが隠せない。



「な、何で、燃やしちゃったの?朱?」

「…兄さん」



引き攣った笑みで朱を見れば、朱は私の姿を見て今度は安堵したように息を吐いて私に手を伸ばした。

そしてぎゅっ、と優しく私を抱きしめた。



「…いつもと様子が違ったから兄さんにまた何かあったのかと思って…。何もなくてよかった」



ぎゅぅ、と私を抱きしめる朱の手に力がさらに込められる。


過保護&心配性が見事に悪化している。
これも全部強化合宿のせいだ。


あの強化合宿で朱との約束を破ってボロボロになって帰ってきてから朱の時々見せていた不安定な部分が悪化してしまっていた。

2度目の今の朱は1度目と違う部分が目立つ。
これまで能力者という立場上何度も傷を負ってきた私だが、そんな私を見る度に朱は1度目の時よりも落ち込んだり、悲しんだりしているように見えた。

私が傷つく状況や事態は今の朱にとっておそらくトラウマなのではないか。


例えば1度目の記憶があって1度目の私が死んだ記憶がある、とか。









< 254 / 296 >

この作品をシェア

pagetop