2度目の人生で世界を救おうとする話。前編




『ええ。この大会の結果が変わってもさしてシナリオに影響はありません。前にも言いましたがアナタは好きに生きているだけでよいのです』


神様の優しげな声がまた頭に直接響く。姿こそ見えないがきっとあのニコニコ笑顔を浮かべているのだろう。


『わかった。ありがとう』

『いえいえ。アナタが勝つことを選ぶのか、はたまた負けることを選ぶのか…。とても楽しみに見ていますよ』


疑問が解消されたので神様にお礼を言うと今度は優しげな声ながらもどこかこの状況を楽しんでいる神様の声が頭に響いてきた。



*****



「勝者、葉月紅様!」


審判が大きな声でこの実戦の勝者の名前を叫ぶと会場からは、うおおおおお!と男たちのけたたましい叫び声が上がった。
さすが男子校。叫び声が厳つすぎる。

最初こそ各々好きなように自分の番を待っていた生徒たちだったが大会が進むにつれてどんどん自分の出番が終わって行き、準々決勝までになると1戦1戦の注目度が初めの実戦とは明らかに違い、格段に上がっていた。

特に次期当主、蒼、琥珀、そして何より今回初めて実戦を披露する私と武の出るものは実戦を重ねるごとにどんどん注目度が上がっていく。


「兄さん!」


準々決勝も麟太朗様の望み通り私の圧倒的な力を見せつけた形で終わり、さっさと2階席へ戻ろうとした時その可憐な声が私に届いた。


「朱?」


声の方へ振り向けば花が綻ぶような満面の笑みを浮かべてこちらに駆け寄ってくる朱の姿が目に入った。


「お疲れ様!さすがだったよ。圧倒的すぎて幻想的で綺麗だった」


これは実戦の感想なのか?と思うようなことを我が弟は笑顔で言う。


「ありがとう。まあ、このくらいなら余裕だよ」


朱の変な褒め方に照れながらも私はくすぐったい想いに何とか蓋を閉めて冷静な表情でそう返した。
本当は恥ずかしさと照れ臭さで破顔しそうなのだが蒼に今朝注意されたばかりなので気を緩めすぎないように気をつける。







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