17歳、昼下がりの散歩道
第二章
徐々に速度を落とす電車と反比例して、私のわくわくした気持ちは加速する。


乗車してから約45分が経過して、今日の日帰り旅行の目的地である桜並木のトンネルが存在する町に到着した。



”鵺ノ森”と書かれた駅のホームの表示に、懐かしい記憶が蘇る。



待ちきれない思いで、1駅前の駅を発車した頃からドアの前に立っていた私は、電車のドアが開いた瞬間に一歩を踏み出した。


田舎町のこの駅で降りる人はそう多くない。



私ははやる気持ちを抑える為にゆっくり歩みを進め、改札へと向かった。


改札と言っても、この駅は無人駅。

しかも自動改札機はなくて、代わりに設置されている回収箱に切符を入れるのだ。

いわゆる、無賃乗車が容易にできてしまう駅なのだと思う。

私はやらないけれど。




「さて、と……。」




駅を出ると、柔らかい春の日差しが降り注いでいた。


天気もばっちり。絶好の花見日和だ。



一度深呼吸をすると、春の匂いが鼻腔をくすぐった。


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