17歳、昼下がりの散歩道



「詩織!しっかりしろ!」




呼びかけても一切の反応がない。



不安と焦燥が混ざり合って、頭の中の整理がつかなくなる。




何が起こった……?



混乱が頭の中を掻き乱すのに、どこか冷静な自分がいるのが唯一の救いだった。


ポケットから取り出した自分のスマホから、救急車を呼ぶ為に発信をする。



電話口で何を言ったのかさえ覚えていないほど、俺の脳内はごちゃごちゃしていた。





通話が切れたその瞬間に着信音が聞こえて、俺は我に返った。




鳴っているのは俺のスマホではなく、地に転がっていた彼女のスマホ。



その画面に表示された”ママ”の文字を見て、俺は迷うことなくその着信を取った。




『あ、詩織!今どこにいるの!?』




真っ先に聞こえてきたのは心配そうな女性の声。


それに躊躇うことなく俺は口を開いた。




「詩織さんのお母様ですか?実は、今さっき詩織さんが倒れて、今救急車を呼んだところです。場所は、鵺ノ森町の―――。」




こういうときに冷静になってしまう自分が嫌いだ。


淡々と状況説明をできてしまう自分が嫌いだ。



消えそうな命を目の前にして、どうして俺の表層は冷静でいられるのだろう。



人の死を目の当たりにしすぎて、自分の感覚が狂っていることを初めて自覚した。


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