〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

 翌朝。
 朝の血圧と血糖測定の時、パクはトラブルの首に傷を見つけた。

「その首、どうした?」

 トラブルは手話で答えた。

壁紙を切るカッターの刃が飛んで来ただけです。

「ふーん」

 パクはそれ以上何も聞かず、会話を終わらせた。

 今日はメンバーのオフ日なので、パクは休みだ。

 トラブルは、ゴンドラの動作テストをすると、出掛けて行った。




 ソン・シムは「あのバカ、無断欠勤か?」と怒りながら新人に電話していた。

 新人は眠れなかった。
(何て、バカな事をしてしまったのだろう。もう、俺はお終いだ。逮捕される。人生終わった。何も死のうとしなくてもいいじゃないか。廊下に誰かいた気がする。目撃された。あー、俺はおしまいだぁー!)

 電話が鳴る。ソンからだった。警察が会社に来たと新人は戦々恐々として 電話に出た。

「もしもし……」

「こらー、新人、寝坊か? 遅刻だぞー、具合でも悪いのか?休むなら連絡してこいよ」

 いつもの調子で話すソンに調子を狂わせながら「あ、えっと、風邪を引いたので2、3日休みをください」と答えた。

「おー、お大事にな」

 通話を終わらせ、新人は訳が分からないと首を振る。

(トラブルは何も言ってないのか……)




「あのバカ、風邪だってよ」
「なんだよー忙しいのによー」

 大道具達は口々に文句を言いながら仕事に戻る。

 もう、トラブルをいじめる者はいない。

 何も知らないソンはトラブルに「メイク室は使えるか?」と聞いた。

「明日、鏡を取り付けたら、すぐ使いたいそうだから掃除もしておけよ」

 まさか自分の残業命令で恐ろしい事が起きていたなど、ツユほどにも知らない。


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