甘味(短編集)


「中村って、彼氏いるの?」


「へ?」


春休みが終わって新学期。


晃くんは三年、私は二年に進級した。


新しいクラスは、ちらほら知らない人がいて、私の席の前に座る、この新沼くんもそう。

体ごと、私に振り返り、椅子を跨いで腕に顎を乗っけて上目遣い。


「うん?」

ガヤガヤした教室内で首を傾げる私。


「だから、中村は彼氏いるのかって」

笑いながらもう一度。


「あぁ、うん。いるよ。」

言いながら晃くんを思い出して頬が緩む。


新沼くんは、ふぅん、と聞いておきながらそっけない返事。


「新沼くんは彼女さんいないの?」


「カズヤ」

「え?」


「だから、俺は一也だから、そう呼んでシホ。」


う、うん??
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