クローバー2~愛情~
美穂は自宅に帰ると、両親に声をかけた。

「パパ、ママ、ただいま」

「今日は、まぁ、早いな。また、あいつと会っていたのか?」

「うん、カズキくんと。あいつ、なんて言い方やめて、パパ。私たち、真剣につきあってるの」

「ふん。お前、今日は何の日か覚えてるのか?」

「私の誕生日でしょう?」

「そうだったな。おめでとう、28歳か。その、28歳になる日に、お前はウエディングドレスを着ていたはずだったんだぞ」

ふぅ~っと美穂はため息をついた。

「また、その話。拓也と私は、ちゃんと話し合って分かり合って別れたの」

「で、招待状が来るわけか」

「それは・・・恵美が、私とカズキくんのことを拓也に言って刺激したからよ。拓也も、今は分かってくれてる」

「どうだか」

はぁ・・・どう言ったら分かってもらえるのか。

「あのね・・・今度、カズキくんがきちんと挨拶に来たいって」

「ふん。会ってやってもいいが、認めるかどうかは俺の判断だ」

「とにかく会って。ジュエリーデザイナーを目指して、すっごく頑張っている人なの」

母が口をはさむ。

「お父さん・・・美穂が落ち込んでいたころのことを思って。今は、こんなに生き生きとしているじゃないの」

ありがとう、ママ。

「そう・・・だな。あのころよりはだいぶましだな。その・・・カズキくんとやらのおかげなのか?」

「そうよ。カズキくんが生きる希望をくれたの。今の職場を紹介してくれたのもカズキくんだし」

父は目を細めて言った。

「俺は、すこし思い違いをしていたらしい。美穂が、拓也くんのことを忘れるために適当に選んだ男かと・・・そうじゃないんだな」

「私は、カズキくんを愛しています」

「分かった・・・週末は、たいてい時間を持て余しているから、いつでも連れてこい」

美穂は、父に抱きついて言った。

「大好き、パパ!!」

父は、思い返していた。大きくなったら、パパのお嫁さんになる、と言って聞かなかった幼いころの美穂を。もう、自分でパートナーを選ぶ年になったんだな。

「お風呂に入って寝るね。おやすみなさい」

「ああ。おやすみ」

美穂は、部屋に入って、和希にメールをした。

【大丈夫っぽいよ】

【パパ、カズキくんのことを認めてくれたっぽい。安心して挨拶に来て。】

すぐに和希から返信が来た。

【本当に?】

【嫌われてたっぽいのに。いろいろ説明してくれたんだな、美穂は。ありがとう。】


【うん】

【話したら分かってくれた。私は、カズキくんを愛してるから。じゃあね、おやすみ】


【そっか】

【愛してる、美穂。おやすみ】

美穂は、幸せな気持ちでお風呂に入ってきて、ベッドに入ったのだった。



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