痛み無しには息ていけない
あー…と納得する吉田さん。


「…あれ?沙織って、名古屋出身だっけ?」

「いや、こっちだよ。彼氏はこっち出身で、今は名古屋に赴任してるの」

「なるほどね」


自分の脳内に、自分が生まれる前に流行した、今でも人気が高い某鉄道会社のCMソングが流れる。
その曲も、遠距離恋愛をテーマにした曲だった。


「そういう小川さんは、GWはどうしてるんですか?」

「普段は試食販売の派遣が稼ぎ時なんっすよ。で、サッカーある時は試合観に行ってます。…でも今年は、神奈川の試合は止まってるしなー」

「そういや、試食販売はどうなってる?」

「暫く活動自粛だって。今朝、電話あった」

「したら、関東は何処も駄目でしょうね…」


自分は吉田さんの質問に答えて、そのまま近況報告になる。
…あ、“したら”、北海道の訛り出た。

テレビの話題はそのまま、活動自粛によるストレスと、経済への影響に移っていた。
自分はそのまま、テレビを眺める。
…てゆーか、この収録、どうやってんだろーなー?疫病、空気感染らしいじゃん。


「今朝のニュースでも、“医療従事者の子どもがハブられてる”ってやってたしなぁ」

「たぶん皆、ストレス溜まってますよね」

「俺が観たニュースでは、飲食店に刃物を持った男が入ってきて、従業員が怪我したってのがありましたよ」

「あ、それ自分も知ってる!強盗ですかね?」


ゲームのコンボのように話題が繋がる。
皆がこれだけ目にしてるって事は、ストレスが溜まって事件やトラブルが多発してるか、起きた事件が大々的に報道されてるかのいずれかだ。


「でもどう考えても、飲食店の人も医療従事者も悪くないっすよ」

「確かに。子どもなんて、更に悪くないですよ」

「子どもはは生まれてくる時に、親選べないんですもん」


先行きが見えなくて不安なのは分かるし、こんなに抑圧されてストレス溜まるのも分かるけど。
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