【修正版】クールで無表情な同期が十年間恋情を患っていた理由
「退職……? なんでいきなり」
「いきなり決まったんだよ。……ほら、しっかり働け! あいつの穴埋めは大きいぞ」
「――部長!」
部長はまるで詳細を聞かれるのを拒むように、僕の声を振り切ってフロアを立ち去って行く。
いきなり、辞めただって?
一瞬、結婚というワードが過ぎったが、すぐに頭を振る。
そんな話しも聞いていなかったし。むしろ、スマホを見てはため息をついているほうが多かった。
それに、もし、するのであれば
『富丘くん、聞いて』
とこっそり教えてくれたに違いない。