二つの心臓
春の匂い、新しいセイカツ。
 カーテンの隙間から差し込む朝の陽射しで目を覚ます。新しい住居独特の匂いと隣ですーっと寝息を立てて眠る彼女の髪の匂いが小窓から入り込む暖かな春の風で揺れて心地好い朝を迎える。
 彼女の菜月と同棲する為に引っ越してきて二日目、視界の隅に割れ物、書籍等とマジックで大きく書かれた段ボールが積み重なっているのを見て、早く整理しないとな、と思いながらもこれから一緒に住むんだなという感じが湧いてきて口元が少しニヤける。


 隣で寝ている彼女を見てもう付き合って五年も経つのか、と思うと同時に紆余曲折を経て彼女と一緒に居るのが改めて嬉しく思い愛おしげに彼女の綺麗な髪を撫でていると彼女と目が合い、優しげに眠たそうに微笑んだ。
「おはよう。湊くん、気持ちいい朝だね。」と言いすぐに目をとろんとさせ、髪を撫でている僕の手を取り再び眠りについた。
 そんな彼女と視界の隅に一つだけ開いているアルバムと書かれた段ボールとを見てしょうがないなぁ、と苦笑いしながら結局、「まぁ、昼からやればいいかな。」と彼女の手を握り返し再び夢の中へと旅立った。


 換気扇が回る音、カチャカチャと何かをかき混ぜる音とケチャップの匂いがした所で目が覚め、音のする方へと目を向けるとキッチンで彼女が何やら料理をしていた。枕の隣に置いていた携帯を取り時間を見ると十一時だと分かり、あ、昼ごはんか。と思いお腹からぐぅーっと鳴るのを聞いて体を起こした。
「お昼はオムライス?」と僕が聞くと彼女は笑顔で言った。「ん! せいかーい! よっぽどお腹が空いてると見たね。」と菜箸でピシッと僕を指しニヤッと笑った。
「もうご飯出来るから机出しててね!」と言われ、布団を畳みながら「りょーかいです」と言って机を組み立てた所で彼女がオムライスを持ってきた。テレビもまだ出しておらず、何もない部屋で彼女とオムライスを食べながら他愛もない話をする。
「食べ終わったら昨日の続きしようか。」
「アルバムは最後にしないとね!」と言って笑い合った。新しい家で食べる彼女との初めてのご飯はとても愛情がこもっていてこれまでにない程に美味しかった。


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