砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「きゃあああ!」

私は腕を振り払って、黒い渦とは反対の方向に、走って逃げた。

走って走って、逃げて逃げると、白い靄の中から数人の子供達が現れた。

その子供達には、見覚えがあった。

風土病で苦しんで、診療所のベッドで横になっていたあの子供達だ。

中には、涙目で私に訴えていた、あの子供もいる。

「お姉ちゃん。僕達、助からなかったよ。」

「えっ?」

「私達、死んじゃったんだ。」

「嘘!」


どうして!?

薬は届いて、皆に注射したって言うのに。


「ねえ、お姉ちゃん。僕達、今からあの黒い渦の中に、吸い込まれるんだ。」

身体が震えた。

「一緒に行こう。」

「いやああ!」

また別な方向に逃げようとすると、あの涙目で訴えていたあの子供が、私の腕を掴んだ。

「お姉ちゃんだけ助かろうなんて、虫が良すぎるよ。」

その目は、涙目ではなく憎悪に満ちたものだった。

「やめてええええ!」
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