次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜
教室であれやこれやと連絡が終わり、私たちはやっと入学式に向かっていた。
並んでいる間にも、メイクを直す女子、携帯ゲームを始める男子、こんな人たちばかり、うんざりしていた。

そんな中、隣のクラスの男子とパチッと目が合った。長髪で、目に髪の毛がかかっていた。

(…清潔感ないなぁ)

と思ったのもつかの間、彼は手を伸ばして私の腕を掴んだ。

「っ?!」
「ごめん!ピン貸してくれない?」

彼は申し訳なさそうに手を合わせる。
手首にはブレスレットが光っていた。

「ど、どうぞ」
「ありがとう!今日中に返す!」

彼はそう言って列に戻っていった。

『新入生、入場』
合図がかかり、体育館に入った瞬間

───酷すぎる演奏が耳に響いた。

吹奏楽部だ。
毎年この学校は、入学式に吹奏楽部の演奏を使う。
去年の入学式は、先輩からの動画で見たけど、ここまで酷くはなかったはずだ。

そこそこだからこそ、私はここの吹奏楽部に入ろうと思ったから。

(なんで…おかしい、色々おかしい)

まず人数がいない。サックス1人、チューバ1人、トランペット1人、打楽器1人の、計4人。
そんなんで演奏がまとまるわけが無い。

もうひとつの問題は、指揮者だ。
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