不細工芸人と言われても
勢いまさかの温泉旅行
カホから、電話があったのは、30日の日だったと思う。
俺は、まだ仕事でドラマの撮影があって、着信に気が付いたのは帰宅した12時過ぎだった。
もう、寝てるかな…
躊躇したが、やっぱり折り返すことにする。 声が聞きたい。

7コール目で、カホが出る。

「…………もしもし」
あ、こりゃ寝てたな。
「あ、ごめん。もう寝てたよな。」
「高岡さん?」
「うん。折り返し遅くなってごめん。」
「ううううん。」
「なんかあった?」
「……………高岡さんは、ずっと忙しいね。私は今日で仕事納め。」
「俺も今日で終わりだよ。」
「温泉、行く。」
「え?」
「一緒に温泉行こうって言ったじゃないですか。」
「…………え、でも実家帰るんだろ?」
「別に今回くらい帰らなくてもいいです。」
「でも、親御さん心配するだろ? 」
「…………………。」
「…………………。」
「…………じゃあ、いいです。」
カホは、少し怒っているようだ。
「いいですって何がだよ?」
「高岡さんは別に私と温泉行きたいわけじゃないんだもんね。」
「…………行きたいよ。」
「うそ。だって、冗談だったんでしょ?」
「…………じゃあ行こう。明日出発するぞ。迎えに行く。」
「え!明日?」
「11時。アパートの前で待ってるように。」

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