不細工芸人と言われても
え、え、え? 嘘だろ?おい。
食事を終えて、一緒に紅白なんか見ちゃったりして、もう何年ぶりかの年越しの雰囲気を味わう。
横に、カホがいる。
来年の今頃もこんな風にしていられるんだろうか。と思うと、切なくなる。
チラリと横目でカホを見ると、こっくりこっくりと眠たそうにしている。
ハッとして、目を開けるカホを見て、俺は笑う。

「小学生のガキみたいだな。 紅白の最後までは起きてらんないっていう。」
カホは、ムッとして怒って、俺にパンチをする。
「うるさい。」
「あ、いて。お前結構本気で殴ったな。」

プンっと怒って、カホはフラッと立ち上がり、隣の部屋の襖を開ける。
案の定、大きめのダブルの布団に枕が二つ並べられていた。
カホは、固まって、その布団を見ていた。

俺は苦笑して、あえて明るい声で言う。
「こんなんでも俺たち恋人とか夫婦にでも見られたかなあ。」
「こんなんでも?」
「おじさんはこっちで寝るからな。」
と、今いる部屋を指す。
「ジャンケンして決めよ。」
「いいよ。俺は、もうちょっと飲みたいし、こっちにいるよ。 お前はもうまた酒が回って眠いんだろ。いい子は寝なさい寝なさい。」

カホはムッとして、不機嫌になり、俺の分の枕をえいやっと俺に向けて投げつける。
「…………じゃあ、もう寝る。ほんとは一緒に明けましておめでとうって言いたかったけど。もういい。おやすみなさい。」
「枕投げかよ!」
カホは、怒ってピシャリと部屋の襖を閉めた。

「おやすみ。」
俺は少しホッとしてつぶやき、テレビの音量を下げる。


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